【厳格な合理性の基準:あてはめのポイント1ーー目的審査1】司法試験・予備試験対策

厳格な合理性の基準とは、ある憲法上の権利の制約が合憲といえるのは、目的が重要な利益を達成するためであり、手段が目的との関係で実質的関連性を有する場合に限られるとする基準のことをいう。

この基準は、実際に使うときにどのように使えばいいのか悩むことが多いのではないだろうか。受験生に多い答案の問題点を指摘するとともに、「目的審査」をどのように行っていくのかについて解説していく。

まず、目的審査の重要性を意識できていない答案が散見されることについて述べる。憲法解釈論の応用と展開・50頁に言及があるとおり、「とりあえず漠然・広汎な立法目的を掲げてそれを『正当」とか『重要』ないし『やむにやまれぬ」利益であると簡単に済ませている」答案が散見される。しかしながら、同頁の見出しが「目的審査の重要性」とされていることからわかるとおり、目的審査を蔑ろにするわけにはいかない。受験生の答案で差がつきやすいポイントだからこそ、一度、整理しておく必要がある。

再度、基準の内容のうち、目的に関する部分を確認すると、厳格な合理性の基準は、規制目的が「重要な利益を達成する」場合であることを要求する。

ここでいう「重要な利益」とはどのような利益をいうのであろうか。 例えば、芦部憲法・134頁には、「ここに言う重要とは、正当よりも審査が厳しく、不可欠よりは弱い、と言う趣旨である」と解説されている。ただ、この説明を読んでも、いわゆる「三種の基準」の中間に位置する基準なのだから、それを言い換えているだけではないのか、と思われるであろう。

そこで、他の文献を見てみると、憲法論点教室・16頁には、「難しいのは中間審査基準における『重要な利益』である」と指摘されている。受験生の皆さんが意識すべきなのは、中間審査基準における重要な利益であるかどうかの論証は「難しい」ということである。

例えば、令和2年予備試験憲法の問題では、犯罪被害者等を保護するために、犯罪被害者等に対する取材活動が制限されている。この事例において、中間審査基準を示して違憲審査しようとする方も多いと思われる。そのうえで、「私生活の平穏を保護する」という目的は「重要な利益である」と簡単にまとめる答案も見られるところである。 この問題の規制目的をどのように捉えるべきなのかに関しては、同年の出題趣旨が、「私生活の平穏ということを幅広く理解すれば,取材活動を制約する根拠としてこれを直ちに承認することは困難である。」と指摘している点に注意が必要である。「私生活の平穏」自体は、個人によって平穏であるかどうかについての感じ方が異なるため、具体的な権利や法律上の利益とまでいえるのかは難しいことからすると、規制目的をもう少し限定して考えることも必要となるであろう。

先ほど紹介した憲法論点教室には、「『やむにやまれぬ利益』とまでは言えないが相応の重要性を持つ目的」として、経済活動に伴う弊害の除去・緩和、公衆衛生の維持、自然・文化的環境の保全など、多種多様に想定可能」と指摘されている。そうすると、事案の具体的事実との関係で、説得的に、その規制により達成しようとしている利益が「重要である」ということを説明していくことが必要となるであろう。

(『厳格な合理性の基準:あてはめのポイント2ーー目的審査2』へ続く)

※令和2年を素材に解説した講義はこちら
https://youtu.be/i4cEd7y_O3w

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